ポケットティッシュの起源と意外な日本との関係
ポケットティッシュの起源はいつなのか
文字通りポケットにすっぽりと収まってしまうミニサイズのティッシュとして親しまれているポケットティッシュは、時には手軽にできる広告素材として用いられることもあり、台ふきんの代わりに水こぼれをさっと拭き取る衛生グッズとして重宝されるほか、メイクや汗ふき、ナプキン、お手ふきなどあらゆるシーンで活躍する日常雑貨です。駅周辺や繁華街でティッシュ配りをされているのを時々見かけますが、実は日本独特の風景であり、海外ではまったく見られない光景です。少なくとも下手なチラシを作るよりティッシュを配布した方が、宣伝効率はぐんと上がります。
ティッシュはいたるところで役に立つので、拒否されることはほとんどありません。ティッシュの梱包ビニールの隙間に広告を入れることを思いつくあたりは、さすが日本人らしいアイディアだと言えるでしょう。そもそもティッシュはいつごろ誰によって製造されたものなのか、あまりに身近すぎて考えたこともないという人が多いかもしれませんが、日頃何かとお世話になっているティッシュについて、その起源を知ることは、決して無駄にはならないはずです。むしろ歴史を知って、ますますティッシュへの親しみがわいてくることでしょう。
昭和生まれの人なら、昭和30年代から40年代前半頃までトイレの紙は、分厚いグレーの和紙か新聞紙だったことを覚えている人もいるでしょう。水洗トイレも普及しておらず、一般家庭のトイレは汲み取り式トイレだった時代です。日本でティッシュペーパーが出回るようになったのは、戦後間もない昭和28年ごろです。それから10年あまりたった頃に、今よく見かけるロールペーパーが売り出されるようになります。翌年にはボックスティッシュが発売され、メディアで紹介されたことがきっかけで爆発的に広まりました。しかし、実はティッシュそのものは第一次世界大戦中にガスマスクフィルターとしてアメリカですでに開発されていたのです。
戦争の道具としてティッシュを開発
ポケットティッシュの起源はティッシュそのものの起源です。実はティッシュが開発されるきっかけとなったことがあるのです。それは第一次世界大戦中に手術に使用する綿が深刻な品不足に陥っていたことでした。綿に代替できる何かを開発する必要に迫られて、研究を重ねた結果発明されたのがティッシュです。
今では使い捨てハンカチーフのような使い方をされているティッシュが、元々は戦争用のアイテムだったとは驚かれる人も多いことでしょう。確かに通気性が抜群に良いですし、きめ細かい繊維でできていますから、異物から身を守るには最適であるに違いありません。ただし戦争が終わってしまえば無用の産物なので、戦後になって処理に困ってしまったはずです。そこで発案されたのがメイク落とし用に活用することでした。それまでメイクはハンカチかタオルで拭っていたということも驚きです。肌をタオルやハンカチで擦るのは、肌のことを思えば少々乱暴ですし、衛生的にも問題があります。アメリカで大成功を収めたメーカーが日本進出してきたのが昭和30年代前後です。ティッシュは多くの日本女性に受け入れられましたが、一般家庭に浸透するにはもう少し時間が必要でした。
戦争がなければこの世に生まれることもなく、未だにちり紙を生活必需品として使っていたかもしれません。また当初は今のようにきちんと丁寧に折られた状態ではなく、2枚重ねでもありませんでした。いわゆるポップアップ形式で、1枚抜くと次の1枚が出てくるという形を形成するには、折りたたみを自動的に行う最新機器が必要でした。
ポケットティッシュのその後
ティッシュの自動折りたたみマシーンが、いかなるいきさつで開発されるにいたったのかを知る手がかりを見つける事は大変困難ですが、開発されたことであらゆることが可能になりました。今では一般に見かける観音開きにプラスアルファで2枚重ねにされたものが流通するようになって、より使い勝手の良いティッシュボックスが大量に普及しました。
続いて1枚では破れやすく技術的にも大量生産が難しかった問題をクリアしました。メディアの力も借りながら、ティッシュは主婦の間で評判となり、爆発的に売れるようになりました。ティッシュがそれまでトイレなどで使われていたちり紙と決定的に違う点は、難水溶性である点と、薄くても破れにくい点にあります。こうした利点を生かして台ふきんや脱脂綿の代用品としてしばしば使用されますが、反面トイレに流すと詰まってしまうことがあるがゆえに、トイレ用ちり紙とは別物として扱われます。
大量生産が可能になったことで、販促品として提供される機会が増えてきました。ここに目をつけた消費者金融が、銀行を通して自社サービスをアピールするミニ広告紙を表側に添付したポケットティッシュを無料配布し始めました。ティッシュの開発元である本場アメリカでも思いつかなかったアイディアを、日本人が思いつき特有のサービスをスタートさせたという過程は、やはり日本人ならではと言うべきです。この手法に便乗する形であらゆる業者がティッシュを配りはじめ、今ではあらゆるシーンで活用しています。ミニサイズの携帯用ティッシュの起源は宣伝広告を手軽に行いたいというマーケティング手法の1つとして導入されたものなのです。
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